FCエフォートの強さに迫る|美濃部 寛貴監督インタビュー

近年県内でトップクラスに位置し続けるFCエフォートとは

近年中学年代のクラブチームは、街クラブであっても芝生のグラウンドで練習するのは当たり前の光景になっており、また強豪クラブは入団セレクションを行い戦力の維持向上を図っている。

言うまでもなくそういったチームが継続して公式戦で上位に入るのだが、満足な環境を整えられずしも結果を残し続けているチームがある。

それは大津市を拠点に活動するFCエフォートだ。

元JリーガーでありJクラブの監督を長年務められていた美濃部直彦氏が2017年に立ち上げたクラブで、2年連続クラブユース選手権準優勝し、関西大会にも複数回出場している。

そんな躍進著しいクラブの監督を務める美濃部寛貴監督に話を伺った。

美濃部寛貴監督

美濃部寛貴(みのべひろき)監督

所属:セゾンFC-野洲高校-京都産業大学-SP京都FC-MIOびわこ滋賀(現レイラック滋賀FC)

野洲高校時代には全国高校サッカー選手権に出場。第89回大会の初戦の松商学園戦で見せた五人抜きのゴールは高校サッカーファンを唸らせた。2025年現在はJFLの飛鳥FCのコーチングスタッフも兼任している。

サッカーは相手を見てプレーすることが重要

-エフォートは毎年守備が堅いイメージがあります。チーム作りで意識するのは守備ですか?

よく言っていただきますが、その年代の選手に合わせたチーム作りを心掛けています。

例えば、一昨年のメンバー(2023年のチーム)はポゼッションができましたので攻めを意識していましたが、昨年のチームは守備に重点を起きました。

ただ引いて守るのではなく中盤から前線のプレッシングや、システムの理解度を上げて守備から攻撃への転換を意識しました。

-年代で変えているんですね

セレクションをせずに選手に来ていただいているので、その年の選手の個性を引き出せるようなチーム作りです。

うちの代表(美濃部直彦氏)の考えでもありますが、「サッカーは相手を見てプレーすることが重要」という考えがあります。

自分たちのやりたい事をやるのも大事ですが、相手のやりたい事を消したり利用したりと、ピッチレベルで柔軟に状況に合わせて戦うというものです。

-それは観客席から見て取れますね。ポゼッションをしていると思えば背後にロングボールを入れたり。柔軟だなと。

3種はプレッシングをメインにするチームが多いので背後は有効になります。

プレッシングの相手にはロングボールでラインを下げさせて中盤のスペースを作るなど、局面、局面でどこを見るか何を考えるかは選手に伝えています。

-言うのは簡単ですがそれを選手がピッチで実行するのは難しいと思います。どのような指導で選手に落とし込んでいますか?

4つの観点(メンタリティ・テクニック・タクティクス・フィジカル)で指導しています。

戦術面では相手を踏まえた上で自分たちが通用した点や通用しなかった点をしっかりとフィードバックしています。試合を通してフィードバックすることで見るべきポイントが認識できます。

-相手チームをしっかり見ないとできないですね。

前提として指導者自身がしっかりと相手チームの分析を大切にしています。

それを1、2週間のトレーニングで落とし込みます。うちのチームには色んな特徴を持つ選手がいるので、この相手であったらこの選手など選べます。

もちろんベースになる選手はいますが、相手に合わせて選手の特徴に合わせて戦い方を変えられます。それがエフォートの強みでもありますね。

-セレクションしないことがプラスに働いている?

ポジティブに見ればそうですね。

何をどこを努力すべきかを明確にする

-エフォートはどんなサッカーを目指している?

絶対にこのサッカーを目指すというのはありません。選手一人一人が努力できる環境を提供する。選手一人一人の特徴や特性を見抜きながら伸ばすというのが理念です。

-近年の活躍を見ると応募が殺到しそうですね。

たくさんのお声はいただいています。

それでも先着順というやり方をとっているのは、うちでサッカーしたいという選手を大切にしているからです。

来てくれた子どもと成長してチームを強くしたい、高校でしっかりと活躍できるように送り出したいという思いがあります。その結果、ここ数年うまくいっているのかなと。

絶対に関西に上がらないといけない、県で結果を残さないといけないという目標は掲げていません。

-試合後のフィードバックというのは次の努力に向けたスタートの線引きでもあるんですね。

そうですね。何を努力すべきというのを明確にしてあげる必要があります。

指導の体制は充実

-選手とのコミュニケーショも密に?

ミーティングを含めて個人とコミュニケーションをとる時間は多いと思います。

他のクラブもあると思いますが、週に1回以上はスタッフミーティングを行い、試合の分析や選手の状態などをスタッフ間で確認・共有しています。

全体で情報共有することで、カテゴリーに関係なく全てのスタッフで同じグラウンドにいる選手を見守れます。

-それは全カテゴリーのスタッフでミーティング?

そうですね。U13からU15の全スタッフです。代表も入ります。

-代表は美濃部直彦代表?

そうです。今もあちらで練習見ていますよ。

-美濃部代表もよく練習来られるんですか?

驚かれますが、ほとんどの練習に来られますね。選手の名前と特徴も把握されているので直接指導もされます。

そのミーティングでよく叔父の美濃部代表に怒られます。(笑)

この日もグラウンドに足を運び、選手を見守る美濃部直彦代表

セレクションを行わないのは色々な子に努力する環境を提供したいから

-指導体制を教えてください

コーチングスタッフ、トレーナー、サポートスタッフを含め12名で行っています。各年代に1名の担当スタッフが中心に指導を行いつつ、多くのフタッフで指導やサポートを行います。

-コーチは持ち上がりで3年間指導するのでしょうか?

試行錯誤しながら色々変えていますが、今年のU15の年代は自身が1年から3年間見ました。

その年代に合わせて、監督やコーチの配置を考えます。スタッフにも特徴があるので、年代で伸ばさなければならないところや、キャラクターなどを考慮しています。

-草津東の元10番河合選手(エフォート1期生)から練習はドリブルがメインだったと聞きました。

一期生の1年目はドリ練が多かったですね。立ち上げ当初は他のチームにないようなことをやりたいなと思い、個を鍛えていました。

3年間終わったあたりで代表と振り返った時、チームスタイルを植え付けるのも大事だけど、それによって合わなかった子もいたんじゃないかという話になりました

この中学年代は色々なことを学ぶ必要があり、様々なサッカーに取り組むことも重要であると気付き今に至ります。

-それは指導者、スタッフ陣もある意味毎年がチャレンジですね。

スタッフも毎年同じことをするのではなく、学ばなければならないです。またその年代に合わせた取り組みを行わなければならないなと思っています。

-練習環境はここ(皇子が丘公園G)がメインですか?

ここと皇子山陸上競技場の隣にあるグラウンドがメインです。

-練習環境が芝のチームも増えてきています。この環境で結果を残しているのは凄いですね。

芝生がない環境は我々の課題です。土しかない環境でも最大限伸ばさなければならないと。

-セレクションは行わない?

セレクションを設けないのはここが大きいです。ハード面からして我々が選手を選ぶような立場ではないと考えています

色々な選手に指導する環境を作りたい。色々な選手にきっかけを与えていきたいですね。

-他にチームとして大事にしていることはなんでしょうか

人間性、フィジカル、技術、タクティクスの4本柱を大事にしていますが、その中でも第一に人間性を大事にしています。

ここはサッカーの技術やうまさよりもまず人間性であると伝えており、全カテゴリーで最も重要視しています。

-多感な年代で人間性をどのように養うのでしょうか

問題が起きた場合、個人で解決できるよう目を配っています。

問題点を洗い出し、チームに問題があれば全体でミーティングを行います。個々が問題になっているのであれば話し合います。

サッカーを通して大人になっていく年代でもありますので丁寧に行います。

-エフォートの試合はベンチからポジティブな声がけが多いと感じました。声がけ一つも丁寧にされているなと。

冷静になればわかることであっても、ピッチでは全てを把握できることは難しいです。

チャレンジしたことは褒める。修正の指示はしますが、選手のプレーは尊重するよう心がけています。実際、自分がプレーヤーの時も指導者からの声がけで変わったことがありましたので。

エフォートには努力できる人が来て欲しい

-セゾンや野洲で学んだことが指導でいきている?

そうですね。実はドリやショートパスの練習は結構セゾンや野洲でやったことを取り込んでいます。

-練習内容は

基礎技術は個々で高めていくものだと思っていますので、チームとして個人練習に取り組むのは1、2年生まで。

3年生は試合が多いので次の試合に向けた課題解決に向けての練習が中心になります。火曜日/水曜日/金曜日の練習のうち火曜日が課題解決に当てて、金曜日は次の試合への準備をします。

なお、水曜日は自主参加制にしています。

-自主参加制とはなんでしょうか。

この取り組みは県内でもうちだけだと思います。

他の練習日と同じスタッフはいて練習メニューも組んでいますが、参加するかどうかは選手自身で選択いただけます。

-なぜそのような制度を入れているのでしょうか。

今の中学生は忙しいです。人によってはサッカーだけではなく勉強も頑張りたい子もいますので、選手が練習参加を選べるようにと思い導入しました。

-各年代で伸ばす技術や考えなど、チームとして定めていますか?

ドリブル、キック色々なところに力を注いで欲しいです。自分に足りないところや自分の特徴を伸ばしてほしいというのは僕らの思いです。

絶対これというより、自分がこれを見つけるというところを大事にしています。自分の強みを身につけて欲しい。

-エフォートに来て欲しい子は?

サッカーに向き合える、努力できる子です。これはサッカーだけでなく、保護者への感謝や勉強なども含め、向き合える子です。

-話は変わりますが古巣のMIOびわこがレイラックに変わって躍進していますね。

もちろん応援しています。また、監督が角さん(角田誠さん)になりましたね。

一昨年まで僕らと一緒に飛鳥FCでやっていたので角さんの活躍は嬉しいです。

-美濃部監督は飛鳥FCでどのようなポジションでしょうか。

アシスタントコーチです。社会人のコーチ経験がエフォートに活きていると感じています。

この子らのサッカー人生はこの3年間では終わらないので、今後のサッカー人生を逆算して、今何が必要かというのが分かります。この環境は有難いです。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

  • URLをコピーしました!

コメントする

CAPTCHA