近年、各年代のチームユニフォームや練習着に、スポンサーのロゴが入っているのをよく眼にする。競技力もそうだが支援体制からもサッカー文化の浸透を感じられる。
ここでは地域のサッカーを支えるスポンサー事情について取り上げたい。
街クラブで増えるスポンサー
2024年の高円宮杯U-15サッカーリーグのトップリーグに所属する8チーム(下部組織等を除く)のHPやSNSからスポンサー状況を調べたところ、8チーム中7チームにスポンサーが付いていた。
スポンサーの業種は地元工務店を始め、飲食店、スポーツ用品店など様々だ。
ジュニアユース年代でのスポンサーは自身が中学年代だった頃はあまり目にしなかったが、なぜ増えているだろうか。
背景の一つには、生業としてクラブチームを経営し、プロの指導者が増えたことが背景に考えられる。
また、人工芝グラウンドでの練習、週末の県外チームとのTM(トレーニングマッチ)など、選手により良い環境の提供を追い求め運営費用が膨らんだことで、地域に支援を求めたのかもしれない。
一方、スポンサーになる企業の理由としては、サッカーが好きだから、子供が入っているから、知り合いに頼まれたからといった理由が多い。また、クラブチームは地域に密着しており、選手や保護者への露出効果が高いことから、PRの一環として支援しているケースもあるだろう。
企業によるサッカーチームの支援は、スポンサー料、物資の提供等々の支援が一般的だが、人材の雇用という支援もある。
今回長年にわたり滋賀のサッカークラブを支えている甲陸ロジスティクス株式会社様に、支援の意義や狙い、その効果などのお話を伺った。
仕事だけではなく様々なサポートを行う企業
甲陸ロジスティクス株式会社
ー選手の雇用はいつからかされているのでしょうか
(中島次長)4年前に当社の社員と山内さん(レイジェンド滋賀FC代表)が知り合いということもあって、山内さんから「選手の働き先を探している」というお話をいただきました。そこからのおつき合いですね。
ー雇用の経緯を教えてください
(中島次長)弊社甲陸ロジスティクスは某お菓子メーカーの商品を倉庫で保管管理し、近畿一円に出荷しています。午前中に商品を集荷し、午後に出荷しますので、夜遅くまで倉庫を稼働させています。
そのため、昼から夜にかけて働ける人材が必要でして、午前中に練習を行い昼から働くサッカー選手の働き方と合致しました。
(谷口係長)選手の就業希望と当社の求人が合致した形ですね。
ー人手不足という企業課題の解決に繋がったということですか
(中島次長)そうですね。少子化で売り手市場であるため、なかなか若い方に来てもらえない状況があります。そのような中、選手は社会人でしっかり会社にも来てもらえるだろうと期待し、雇用を開始しました。
サッカーも大事にしてくれる会社。それに応えるかのように選手は会社でも活躍。
いつの間にかサッカーが社内のコミュニケーションツールに。
ーこれまで何人の選手に来ていただいていますか
(平井課長)甲西陸運を含めグループ全体で通算10名強の方に来ていただいていますね。有り難いことに現役引退しても残りたいと言ってくれる子もいます。また、レイジェンドさんだけではなく、レイラック滋賀さんなど他のチームともお付き合いをさせていただいています。
(中島次長)辞めた子(移籍した選手)も新しいチームのHPで随時活躍をチェックしていますよ。淡路行った子や刈谷FCに行った子など。ずっと応援しています。
(平井課長)サッカーの話題がほんと増えた。週末や週明けは特に。サッカーを知らん子も同僚(選手)の試合の応援にかけつけるほどです。
(中島次長)年配の職員が、選手が足を少し引きずっているのを見かけて「試合で怪我をしたのか?大丈夫か?」など気にかける姿があるなど、年代を問わずサッカーを通じてのコミュニケーションが増えましたね。サッカーが一つのコミュニケーションツールになっていますね。
(谷口係長)選手を雇うことで会社の戦力が上がるとともに、雰囲気も良くなりましたね。
ー他の従業員の反応は
(中島次長)サッカー選手を雇用させていただくにあたっては、上の者ではなく従業員の理解も求めて、進めていくというのを従業員に伝えています。ただし仕事がメインではなくサッカーがメインだよと、しんどい言うたら帰らしてあげてくださいと伝えています。
ー反発はなかった
(中島次長)実際どうやろ?僕は聞いてないけど。
(平井課長)実際、彼らが来ていなければ仕事は回っていないので。そこは大きいと思います。選手雇用をスタート時は、(反発は)あったかもしれません。他の従業員と違い勤務時間も短く、土曜や祝日も選手は出社できませんので。
しかし、彼らが確実に会社の戦力として頑張ってくれていることもあり、現場も選手を理解しているので、会社全体で受け入れができていますね。
(中島次長)何よりスポーツ選手っていうのは人間性が素晴らしいよね。受け応えにしても挨拶にしてもしっかりとできる。入社時はフォークリフトなどの仕事で活きるスキルは当然ないですが、すぐに覚える。吸収力が凄いですよ。成長が早い。
(平井課長)全然違いますね。またスポーツ選手は礼儀が正しい。
ー仕事の面でも期待されているのですね
(平井課長)期待し過ぎているぐらいです。来てくれないとうちが困るぐらい。(笑)
柔軟な働き方ができ資格取得への支援も
ー選手はどのような仕事をされているのでしょうか
(平井課長)12時半から19時半の勤務で、フォークリフトに乗ってピッキングをしてくれています。商品管理の仕事ですね。
ー選手はフォークリフトを運転するのですか?
(平井課長)選手には安全第一を目的にフォークリフトの資格取得を推奨し、これまで働いていただいた全ての選手が資格を取得してくれています。
住環境のサポートも行うことも。面倒見の良さがエピソードから垣間見える。
ー関西リーグのチームは選手に住環境を整えなければならないなければチームに来てもらえないという話もあります
(中島次長)弊社に社宅があるので、空きがあれば提供しています。配送のトラックを使って選手の引越しも手伝ったこともありますよ。
(平井課長)北海道から来た子が、自動車がないと言っていたので自動車を手配したりもしましたね。
ー充実したサポートですね。スポーツチームとの関わりはレイジェンドだけですか?
(中島次長)実はレイラック滋賀さんの選手にも来ていただいています。グループ内では、他にバスケットボールのレイクスさんも支援しております。
(平井課長)レイラック滋賀とレイジェンドの試合も応援に行きましたよ。
(中島次長)スケジュールに試合日程が入ってるよね。
選手雇用や練習着スポンサーを経て、ユニフォームに企業名を刻む。
ー2023年シーズンはレイジェンド滋賀FCのユニフォームスポンサーになられています。
(中島次長)これまで練習着スポーンサーはあったのですが、ユニフォームにロゴを入れるのは初めてですね。ムにロゴを入れさせていただきました。
ー社長がトップダウンで決められたのでしょうか。
(中島次長)社長に直談判しました。もともと地域貢献に力を入れていることもあって、このようなご判断をいただきました。
これまで来ていただいた選手には会社の戦力となっていただき、またサッカーを通じて社内の雰囲気も良くなっているということで、弊社としても非常に助かっています。会社への貢献等を考慮しユニフォームスポンサーを決めました。
ー社長もサッカーファンですか
いえいえ。生粋のカープファンです。社長は地域貢献の思いが特に強いですね。
ー今後もサッカークラブとのお付き合いは続けていく予定ですか
(中島次長)そうですね。選手に就職先として選んでいただきたいです。