2023年6月10日、インターハイ予選決勝が布引総合運動公園で行われた。
連覇を目指す草津東高校と、3年ぶりの出場を目指す近江高校の一戦。高校生年代における県内最高峰の一戦をマッチレポートとしてお伝えする。
戻ってきた高校サッカー
キックオフ直前、両校の応援団による激しい応援歌の応酬があり、これぞ高校サッカーという雰囲気が作られる。特に草津東サイドの観客席と一体となった応援は、長年滋賀の高校サッカーを牽引してきたプライドを感じられた。
スターティングイレブン
両校の勝ち上がりは、ともにシード校でここまで3試合を戦い、近江は3試合で13得点という得点力が目立つ一方、草津東は接戦ながらもここまで1失点と守備の充実が目立つ。
そんな両校のスタート時のフォーメーション。近江は定番の3-4-2-1。一方草津東の布陣は近江対策を講じることも考えられたが、変化はなく伝統の4-4-2。
また近江はこれまでの勝ち上がりからメンバーは変えずに望んだが、草津東は準決勝とメンバーが異なり右サイドに9番MF藤田(MIOびわこ滋賀)が入った。
試合内容
試合全体を通して近江がボールを保持し、草津東が守勢にまわる展開。FW出身の前田監督とDF出身の牛場監督(ともに草津東出身)、それぞれのカラーが現れているようだった。
近江は10番左CB金山(シーガル広島)や、7番MF山門(西宮SS)を中心にショートパスで攻撃を組み立て、時には9番FW荒砂(京都サンガSETA)の抜け出しに5番中央CB西村想大(FC湖東)がロングフィードを供給するなど長短のパスを織り交ぜ草津東ゴールに迫る。
一方の草津東はペナルティエリア近江選手を入らせないよう中盤、DFラインがマークの受け渡しに細心の注意を割く。奪ったボールは長身FW11番仙波(MIO東近江)に預けカウンターためを作る。また、近江の武器の1つである左CB金山を封じるよう、右サイドの9番MF藤田と右SBの7番塩尻(SAGAWA SHIGA)が果敢にサイドをえぐる。
前半最初のチャンスは草津東
キックオフ直後から、両校とも球際が激しく、主導権争いが繰り広げられた。
前半5分、センターサークル付近でクリアを拾った11番仙波が粘り反転。前がかりになっていた近江の右サイドの広大なスペースにスルーパスを通し5番MF小楠(セゾンFC)にわたる。
GKと1対1の決定機かと思われたが、近江のCB5番西村がカバーに入り、シュートを打つ前のギリギリのところでスライディングカット。これが後にも先にも草津東の得点が期待できる最大のチャンスシーンだった。
近江の矛と草津東の盾
すると近江が徐々にペースを掴み始める。
前半19分、パス回しからゴールを背に中央で受けた14番MF大谷(MIOびわこ滋賀)。サイドにふると見せかけ反転し無回転ミドルを打つ。GK田中(エフォートFC)がしっかり正面に弾きDFがクリア。
続く前半22分、左CB10番金山がMF7番山門に預けて駆け上がる。ペナルティエリア内でリターンを受けてシュートまで持ち込もうとするも、草津東2番DF松永(京都サンガ)がスライディングでカットし事なきを得る。
近江は両サイドから繋いでエリアに進入するも草津東のDFラインが身体を張って守りシュートまで持ち込ませない。一方、草津東はカウンターや右サイドからチャンスを作ろうとするも、シュートまで持っていけず。
近江が試合を支配し、両チーム得点が生まれず前半終了。
近江はそれぞれがオフザボールも含めどうスペースを作るか、どう使うかを考えながら動いている印象を抱く。一方の草津東は、近江の流動的なパス回しにもポジションの形成を崩さず、マークの受け渡しに注意を払い、最後のところは身体を張った守備でゴールを守った。
後半の試合内容
後半も両校とも同じメンバーも、近江はMFの7番山門と14番大谷がポジションチェンジ。前田監督が先に仕掛ける。
後半先にチャンスを作ったのは近江。左CB10番金山を起点に近江らしいパスワークで中央に持ち込む。エリア正面まで持ち込んだ金山が、空いた右サイドのスペースに駆け込んだMF8番鵜戸(長岡第三中)にラストパス。鵜戸がフリーで打ったシュートはGK田中が弾く。こぼれ球に詰め寄るも草津東が先に触りクリア。
後半も前半と同様の展開が続くと思ったが、このチャンスから近江がペースダウンし、草津東がボールを保持し始める。
後半13分、草津東FWの11番仙波が近江DFにプレスをかけてボールを奪取。ボールを拾った9番MF藤田がミドルを打つも枠を外れる。
続く草津東の攻撃。11番仙波から5番小楠と繋ぎ、右SBの塩尻に展開。7番塩尻が浅いところでクロスを入れ、10番上原(MIOびわこ滋賀)が飛び込むも合わず。
草津東は中盤の5番小楠と14番寺川(MIOびわこ滋賀)がボールを保持する時間が多くなり、パスのテンポが上がりサイドに持ち込む機会が増える。また、5番小楠から10番上原に縦に早いボールが入るなど、徐々に草津東の形を見せゴールに迫るも、決定機までは作れない。
すると後半12分近江の選手交代。14番MF大谷に代えて15番川地(FOSTA)を投入。この交代で6番MF浅井が1列前に上がりシャドーに。15番川地は右サイドで、8番鵜戸は左サイドにポジションを変える。
すると後半18分に近江のチャンスが訪れる。8番鵜戸がエリア付近でカットイン、空いたスペースに左CBの金山が走り込みスルーパスが通る。金山が折り返し、ビックチャンスかと思われたがオフサイドに。
後半20分、草津東にアクシデント。前半から身体を張った守備で決定機を防いでいたCB河合が負傷により交代。3番中西(サンガ瀬田)を投入。
後半終盤は近江ペース。山門が粘りミドルを狙うも枠を外れる。前半と同様、左サイドで起点をゴールを狙う。
後半27分、草津東選手交代。16番成宮に替えて24番力石(MIOびわこ滋賀)を投入。そのまま左サイドに入る。
近江はボールを保持するも決定機まで持ち込めない時間が続くと、草津東が時折カウンターを見せる。FW仙波がプレスでカットしたボールを10番上原がドリブルで持ち上がり、左サイドのMF力石に。ドリブルで持ち込もうとするも近江の戻りが早く決定機には至らず。
後半31分近江の選手交代。9番荒砂に替わり13番小山(ヴェルデラッソ松坂)が入る。
後半終了間際、近江に決定機が。4番MF西(シーガル広島)が左サイドの鵜戸にスルーパスを通す。鵜戸がトラップに利き足の右足に持ち替えようとした際に、草津東2番松永が懸命にブロック。
前後半の70分、激しい攻防が繰り広げられたがスコアレスドローで延長戦へ。
近江は流動的なパスワークや時折見せる個人技で、再三、草津東ゴールに迫り決定機を作った。しかし、草津東のGK田中やCB松永を中心とした草津東のDFラインは対人に強くまた粘りもあり、70分通じて高い集中力によりゴールを守った。まさに県内最強の矛と盾がぶつかった見所満載の1戦。
延長戦へ
延長のオープニングシュートは近江MF山門の無回転ミドル。
延長前半2分、前半からプレスをかけ続けていた2年生10番MF上原に代わり23番川口(FC湖東)が入る。
すると延長前半7分、ようやく試合が動く。
近江の自陣から縦に入れたボールを13番小山が粘って落とす。拾った7番山門が中に切れ込みディフェンダーを引きつけながら右足を振り抜く。相手のタイミングをずらシュートはゴール左隅の抜群のコースに。草津東の守備側にはノーチャンスのゴラッソにより近江が均衡を破る。(得点シーンはいかに転載する動画をご覧ください。)
続く延長前半9分。追加点が生まれる。
ミドルサードでボールを拾った6番浅井がドリブルで持ち込む。草津東のDFを4人交わし最後は冷静にゴールに流し込む。この時間帯でのスプリント、ドリブルのコース取りは見事。草津東DFは疲労によりなかなか足が出せなかった。
延長後半は、草津東が前に出る。7番塩尻に替えて21番川崎(ラドソン滋賀)を投入。
サイドからクロスを放り込む場面が多々あるも近江も後ろに人数をかけ危険なシーンは作らせない。
すると延長後半3分、近江が突き放す。
CKで前がかりになっていた草津東を相手にカウンターで前線にロングボール。最終ラインに残っていた草津東14番寺川がクリアするも、出足の良い近江6番浅井がハーフェラインで拾う。ワンタッチで裏に抜け出し独走。最後はGKとの1対1を冷静に決めて勝負あり。
前がかりになる草津東の攻撃を懸命にブロックし無失点で試合終了。
3年ぶり3回目のインターハイへ
近江は滋賀県大会の4試合で16得点1失点と抜群の攻撃力で大会を制した。
昨年の近江は組織力が目立ったが、今年は組織で戦いながらも、個の力で状況を打破できるメンバーが揃っており、多様な戦い方ができるチームであると感じた。7月26日に北海道の旭川市で開催されるインターハイが待ち遠しい。