県のサッカー選手の受け皿に|草サッカークラブの究極“守山侍”に迫る

Jリーグのない県。

全国でも6県しかないこの称号を無くそうと、JFLに所属するレイラック滋賀を筆頭に、滋賀県のサッカー関係者は日々奔走している。

しかし、Jリーグチームはないけれども社会人サッカーのレベルは悲観するようなものではない。

なぜなら、レイラック滋賀の他、JFLの一つ下のカテゴリーに位置する関西サッカーリーグ1部に2チーム、レイジェンド滋賀FCと守山侍2000が所属しているからだ。

(上位カテゴリーに複数のチームが存在することでスポンサーや戦力の分散に繋がるという意見もあるが…)

レイジェンド滋賀は将来的なJリーグ入りを目指しており、今季は過去最高のリーグ戦2位の成績を収めた。レイジェンド滋賀のチームの成り立ち等については、過去の記事をご覧いただきたい。

そしてもう1チーム、守山侍2000がこの関西リーグ1部(Jリーグ6部相当)のカテゴリーで戦っており、今季は4位でリーグ戦を締めくくった。

このチームは長年、滋賀県リーグを戦っていたのは知っていたがいつの間にか関西を舞台に戦っており、またJリーグ入りを明言していないにも関わらず、滋賀の高校サッカーを盛り上げた名選手や元Jリーガーが所属しているなど、不思議な点がいくつかある。

そこで今回、守山侍の代表であり守山侍2000の監督でもある井上 卓哉氏にお話を伺い、守山侍の素顔に迫った。

目次

守山侍というクラブに迫る|クラブの成り立ちと現状の体制

ー守山侍はどのようなクラブですか

(井上代表)守山南中のOBで集まり、私と仲間で創設しました。
まあ、仲間うちで作った一般的な社会人チームですね。今年で23年目になります。

ー関西サッカーリーグに所属しているチームというだけで一般的な社会人チームとは一線を画しますが…現状のクラブの規模や体制を教えてください。

クラブに在籍している人数は選手とスタッフで90名程度ですね。関西1部で戦う守山侍2000がトップチーム、これは結果を求めるチームとして活動しています。

他にサッカーを楽しむための守山侍ESTILO(エスティロ)がセカンドチームとして活動しており、ESTILOは県2部リーグに所属しています。他にはシニアのチームもあります。

ちなみにスタッフは外部トレーナーの2人以外は全員守山侍のOBです。

ー母体は社団法人とかですか

うちは個人が集まって運営しているクラブでして法人化はしていないですね。

ーJリーグ入りを目指すチームが多い関西1部のクラブは母体の法人によって運営されているイメージがあります

2023年シーズンの関西サッカーリーグ1部に所属している8チームのうち関大FC2008と守山侍以外は法人が運営している。関大FC2008は関西大学体育会サッカー部のチームなので、明確な運営組織がないのは守山侍のみ。

クラブの体制の話に戻りますが、自分は代表兼監督をやっていて、トップチームのコーチはESTILOでプレーしている選手。スタッフは基本的にボランティアが中心です。

スピード感はありませんが、人と人との繋がりで運営しているところが守山侍。法人運営ではない良さがあります。

ー県の1部リーグに長年所属していたイメージがあります。上を目指すきっかけはなんだったのでしょう。

長年、県1部リーグに所属しており、チームには良い選手が多くいたため、県1部でもある程度の結果を残せていました。

しかし、5年程前にこのまま選手の人生を終わらせるのはもったいないなと思い、上を目指すようになりました。

3年でのリーグ昇格を公言していましたが、1年で昇格できたのは良かったです。

ークラブとして20年以上の歴史があり、法人化していないチームいわゆる草サッカーでJ5部相当のカテゴリーで戦っている。驚きです。

ほんとに周りがずっと自分と一緒に歩んでくれたからここまで続いてこれたと思っています。

クラブのみんなが、【周りで支えてくれている人達がいることからサッカーができている】と理解し、家族や職場に感謝しています。

サッカー漬けの毎日を送る井上代表に迫る

質問にテキパキ答える井上代表。お話の上手さから営業マンとしての優秀さも感じられる
ー井上さんご自身もプレーしていたのですか。競技歴を教えてください。

小学校から地元の守山市内のスポーツ少年団でサッカーをはじめました。

守山南中から野洲高に進み、高校の時に守山南中の同級生とこのチームを作りました。そこからずっと守山侍でプレーしています。

ーチームに野洲高校出身の選手が多いのも理解できます。ちなみに高校のサッカー部には所属していなかったんですか

入学当初は所属していましたが、チームを作ってからは徐々に侍が中心になっていきました。

ーご自身も数年前まではトップチームでプレーされていたんですよね

5年前までトップチームでプレーしていましたが、上を目指すことを目標にした時に、一線を離れ監督に専念しました。ただ今もESTILOでプレーしています。

ー日中はお仕事をされていますが、1週間はどのようなスケジュールで動いているのでしょうか。

平日の日中は商社の営業をしています。夜は週3日(火・水・木)の練習に加え、クラブのミーティングや関西リーグの打ち合わせなどがあります。またリーグ期間中は次に戦う相手チームの分析も行います。

ーまさにサッカー漬けですね

そうですね(笑)ちなみに関西1部でクラブの代表と監督を兼任しているのはうちだけです。

守山侍という家族が目指す先は

練習を見る井上監督
ーちなみにたくさんのスポンサーがいますが、(忙しい中)どのように集めているのですか

現在、約40社の企業や事業主様にご支援をいただいています。スポンサーは選手に紹介してもらったり仕事での繋がりからのご縁が多いですね。

ー人脈やツテでここまで集められたのですか

県内のいたる所に選手がいるのが強みです。選手は様々な企業に勤めています。例えばメーカー、教員、営業とか。ちなみに、クラブの経理はトップチームのGKにやってもらっていますが、彼は滋賀銀行勤めです。

改めて滋賀に守山侍が根付いていると感じます。

ーそれは安心ですね!他の選手も日中は仕事をしているんですよね?元Jリーガーの伊藤優汰選手とかはプロ契約とかですか?

いや優汰も日中は普通に勤めていますよ。うちにはプロ契約はいませんし、選手に手当も出していません。むしろ選手から会費をもらっています。

ー最後に今後の目標をお聞かせください

チームとしての目標は、もちろん関西リーグ等を勝ち抜いて地域CLに出たいと思っています。

ーつまりJFLへの昇格が近い目標ということでよろしいですか

そこは目標としてありますが、JFLで戦える体制がクラブとして準備できていません。JFLにいけるベース作りが必要です。スタジアムであったり、人的体制のベースを整える必要があると思っています。特に、スタッフはボランティアなのでクラブとしていつでも動ける人間が少ないのが現状です。

ただ、今は関西リーグでも追う立場です。守山侍らしさを出し、リーグ戦で良いパフォーマンスを継続していきたい。

守山侍らしさ:ハードワーク・我慢強さ・チームのために走れるメンタリティ

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