滋賀のサッカーどころ“甲賀市”
「滋賀のサッカーどころは⁇」オールドファンに聞くと甲賀や水口といった地名が出るだろう。
甲賀市(2004年に水口町などの複数町が合併)は元日本代表キャプテンである井原正巳さんの出身地であり、近年は奥川雅也選手や山田楓喜選手(ともに京都サンガF.C)など数多くのプロ選手を輩出している地域だ。
また個々の選手の活躍だけではなく、学校やクラブチームの活躍も少なくない。
甲南中学校が全国中学校体育大会(全中)の3位入賞を始め、4種のA.Z.R(アッズーロ)が全日本U-12サッカー大会(全少)で3位になったことも記憶に新しい。
2種では何といっても水口高校だ。創立100年以上の歴史を有する高校のサッカー部は全国大会の出場歴も多く、住友金属サッカー部(鹿島アントラーズの前身)でプレーし、日本代表のフィジカルコーチとしても活躍された里内猛氏の出身校だ。
私立高校の台頭などから長らく全国の舞台から遠ざかっているが、昨年は県1部リーグを優勝するなどリーグ戦では安定した強さを見せている。また今年の全国高校サッカー選手権大会滋賀県予選を制し29年ぶり16回目の選手権出場を決めた。
古豪復活の兆しを見せている水口高校。今回、名門高校サッカー部を率いる若手監督の夘田 雄基(うだ ゆうき)氏を直撃した。

夘田雄基監督インタビュー
-これまでの指導経験を教えてください。
(夘田監督)大学卒業後、守山高校での非常勤講師を1年経て、水口高校に赴任しました。守山高校で1年間コーチを経験しましたが、監督はここ(水口高校)に来てからですね。
-初の赴任地で初めての監督。初めてづくしの中で名門高校の監督は大変ですね。
(夘田監督)水口に赴任した時、サッカー部のスタッフが全員替わったので一からのスタートでした。ただ、前任の先生方が下地を作ってくださっていたので、しっかり引き継げば結果は出るものだと思っていました。
-プレッシャーは凄かったのでは。
(夘田監督)水口は公立では草津東の次に位置する高校。一定以上の結果は残さなければいけないとは思っています。

過去をしっかり受け止めた結果が全国に
-就任4年目ですが、過去3年は結果も残しています。ご自身の評価はいかがですか。
(夘田監督)リーグ戦では結果が出ておりイメージしたスタートではあります。しかし、トーナメントでは思うような結果が出ていませんでした。
-トーナメントでも毎年上位進出が期待されていますが、思うような結果が残せない年もありますよね。
(夘田監督)本当に一発勝負のトーナメントは難しいです。リーグ戦であれば切り替えて次の試合に挑むのですが。高校生のメンタルの難しさを感じています。また自身の経験値が少なく、長年現場にいる方々が持っている勝負勘というものが自身に足りていないと感じています。

-そんな中で掴んだ29年ぶりの全国。難しい試合もあったと思います。選手のメンタルの持っていき方や、ご自身の経験不足についてどのように向き合いましたか。
(夘田監督)今までは僕もそうなのですが、特にトーナメントでは失点を恐れて受けに回ることが多く、それが選手にも伝わっていたのかなと。今年のインターハイの準決勝の立命館守山戦も受けに回った結果何もできませんでした。
その反省もあって選手権予選前から選手には「失点を恐れるのではなく、思い切って割り切って自分たちの強みを出そう」と常に伝えていました。今の3年生は波に乗らせれば勝てる自信があったので、自身のベストを出せるよう意識して声をかけました。
-決勝戦では判断に悩む場面でもベンチは思い切って交代カードを切っていたように感じます。
(夘田監督)交代に関しても思い切った決断は前々から大事だと思ってたところもあり、決勝戦の場面でも決断しました。負けたら僕の責任だとは思っているので、思い切りましたね。
就任後に進めた3つの取り組み
-現在のサッカー部の体制を教えてください。
(夘田監督)選手は3学年で80~90名ほどです。スタッフは自分と、野洲高校などで長年指導されていた梅田先生に加えて、コーチ2名、GKコーチ、トレーナーと最大7名体制ですね。

-選手は地元の子が多いでしょうか。
(夘田監督)彦根などの遠いところから来ていただいている子もいますが、地元の子が中心ですね。
-MIOとの強いパイプはないのでしょうか(笑)
(夘田監督)父は非協力的です(笑)地元の子を大事にしろと常々言われています。
※夘田雄基監督の父親はMIOびわこ滋賀U-15監督の夘田貴之氏

-就任してから取り組んだことを教えてください。
(夘田監督)サッカーに打ち込められるような環境づくりとして、主に3点取り組みました。
1点目はコンディション管理です。怪我やコンディション不良の選手には良くなるまでしっかりサポートしています。私と選手、トレーナーで適宜連絡を取り合い、無理をさせないようにしています。
2点目はフィジカルトレーニングです。
以前は走り込みが中心でウエイトが少なかったですが、満遍なく行うようになりました。また、ノーズ(GPS)を導入し数値を出すことで、ランメニューに定量的な目標値を定めています。全国の強豪校との平均値との差が分かりますし、また数値は嘘をつかないので、導入して正解でした。
3点目は選手全員を見ることです。
トップチームだけではなく、全てのカテゴリーの選手をしっかり見るよう心掛けています。
-90名程の全部員を見ているのですか。
(夘田監督)3つのカテゴリーに分けていますが全カテゴリーが一同に練習するのは週2日だけです。他の日は1カテゴリーがオフなので、トップがオフの日などは他のカテゴリーも見ることができます。
-トップの監督が練習を見られるのは選手にとってもありがたいですね。
(夘田監督)全体のモチベーションが上がると思っています。また、水口スポーツの森が全面人工芝になったこともあって毎日人口芝を使えるのも大きいですね。

水口高校が紡いできた歴史を背中に載せて戦う
-練習着にスポンサーを入れられていますが、それも就任後の取り組みですか。
(夘田監督)そうですね。水口高校サッカー部の魅力を高めるために取り組んだ内容です。選手からするとモチベーション上がるじゃないですか応援されているって。また格好もいいですし。
学校側としては地域の様々な方々の名前を背負わせていただくことで、生徒に一層責任感を持ってもらいたいと考えています。
-プレミアやプリンス所属の私立高校等では、スポンサーを入れるのが普及していますが、県内で公立の高校で実施するのは難しかったのではないでしょうか。
(夘田監督)学校の部活動ということもあり、様々な観点からご意見はありましたが、当時の校長先生に理解いただけてよかったですね。ちなみにスポンサーを募集したらすぐに応募がありましたよ。
-スポンサーはどのような企業なのでしょうか。
(夘田監督)全てOBさんが関わっている企業ですね。本当に有り難いです。
-県内有数の歴史がある水口ならではですね。OBも多いのでしょうし。
(夘田監督)本当に周りの方に助けられていますね。特にOBにはあらゆる面で力になってもらっています。ちなみにコーチとして関わってくださっているのもOBが多いです。

若手監督だからこその強み
-水口はどのようなチームスタイルですか
(夘田監督)これっていう特定のスタイルに選手を当てはめるのではなく、来てくれている選手の個の特長を活かしたスタイルを目指しています。ただ自分がDF出身ということもあり守備には口酸っぱく注意しています(笑)
※夘田監督は現役時代、MIOびわこ滋賀U15-守山高校-立命館大学でDFとしてプレーしていた。
-チーム作りで意識している事はありますか
(夘田監督)大学時代、ピッチ内外でも組織で動くということを学んだこともあって組織で動くということを意識しています。
具体的にはキャプテンや副キャプテンをはじめ各年代の代表が集まって話し合う「幹部ミーティング」、幹部ミーティングで話し合ったことを選手自身が仲間に伝えて話し合う「選手ミーティング」を毎月1回は行っています。
-どんな効果を期待しているのでしょうか
(夘田監督)監督やコーチ、先生から言われたことを行うのではなく、自分たちで考え自ら行動することを期待しています。

-指導歴は浅いですが選手と年齢が近いというのは監督の一つの武器でしょうか。
(夘田監督)そうですね。毎試合、選手がどのようなプレーを見せてくれのかワクワクしています。選手と同じぐらいの熱量で試合に挑めているのは自身の強みかもしれません。



