高円宮杯JFA全日本U-15サッカー選手権大会とは
中学生年代の日本一を決める2大トーナメントの一つで今年は第34回目を迎える。本戦は32チームによるトーナメントであり、関西地域からは4チームが出場します。
1年間を通じて地域リーグ(サンライズリーグ1部/2部)と都道府県のリーグ戦が開かれており、サンライズリーグ 1部の1位(ヴィッセル神戸U-15)と2位(京都サンガF.C U-15)のチームには本戦への出場権が与えられていますが、その他のチームは関西地域プレーオフを勝ち抜かなければ本戦に出場できません。
また関西地域プレーオフへの出場はサンライズリーグ所属チームに加えて、各府県に出場チームの枠が割り振られています。滋賀県は2チームの出場が認められており、県のトップリーグ1位である京都サンガF.C SETA 滋賀と、高円宮杯U-15滋賀県大会を制したABRIR FC、またサンライズリーグ 1部所属のMIOびわこ滋賀U-15の3チームが出場します。
1回戦のマッチレポート
11月5日(土曜日)に開催される2試合(京都サンガF.C. SETA 滋賀VS エストレア姫路※兵庫県第8代表) (ABRIR FC VS 伊丹FC※サンライズリーグ2部)を観戦すべく、守山市のビッグレイクへ。しかし、思わぬアクシデントで到着が遅れ、サンガの試合は観戦できませんでした…..残念。
お目当ての試合の結果は京都サンガF.C. SETA 滋賀が 5-1でエストレア姫路をくだしたようです。翌日の2回戦ではサンライズリーグ 1部で惜しくも3位の強豪【千里丘FC】が相手です。
気を取り直してABRIR FCの初戦を観戦
同大会初出場のABRIR FC(アブリー)。相手は兵庫県の強豪【伊丹FC】です。サンライズリーグ2部に所属している格上を相手に自慢のパスサッカーが通用するかどうかに注目です。
13時にアップ開始。アブリーは隣のピッチでクラブユース新人戦(U-14)の試合(ABRIRFC VS FTS?)が行われていたため選手のみでのウォーミングアップでした。同大会初出場で緊張、浮き足が立つ中、指導者がいない中でのウォーミングアップは少し酷なように思えました。滋賀県代表として戦うため、運営側で融通をきかせることはできなかったのかな。。。
一方の伊丹、ウォーミングアップは特徴的で曲に合わせて柔軟も兼ねたダンスを踊っていました。肩甲骨、股関節をほぐすことを重点的に行われていたようです。
調べてみると、これはPNFCトレーニングと呼ばれるもので、曲のリズムに合わせ種目に合わせた動きを行うことで、全身の柔軟性を向上し、連鎖運動をスムーズにさせパフォーマンスの向上を図るというものらしいです。ダンスはステップ、肩甲骨を回す、体を回すなど、ドリブルや球際でよくある身のこなし方になっていました。
また、ダンス以外にもウォーミングアップは合理的で試合を想定した動作のメニューが行われていたように感じます。
初戦突破なるか試合開始
肌寒い気候の中、13時30分に試合が開始。
アブリーは4-3-3で伊丹FCは4-5-1。(アブリーの中盤の位置が不安ですがおそらくこの形かと)
アブリーボールでキックオフ。
開始早々、意気込むアブリーは攻め立てようと前がかりに。
前半3分 失点 (アブリー 0-1 伊丹)
アブリーが前がかりになったところを、伊丹のカウンター。トップの選手が球際を粘ったところ23番がスイッチし、キーパーとの1対1を冷静に流し込む。
アブリーが押し込む展開が続く
アブリーは8番の展開力と11番のドリブルでチャンスを連続で作ります。対する伊丹はダブルボランチがよく効いており、攻撃時は23番が前線によく顔を出し52番がアンカーとなるなど良い関係性で中盤を抑えます。またアブリー11番と伊丹13番のマッチアップは見どころで前半20分ごろまでは伊丹が11番を掴みきれない状況でした。
そんな中、アブリーに大きなチャンスが舞い込みます。
前半13分、相手のハンド?によりアブリーがPKを得ますが、PKは左に外れます。前半16分、続いてペナルティエリア前でアブリーがFKを得ますが、10番のFKは惜しくも上に外れます。8番のループパスを19番が振り抜きますが左に外れます。
アブリーは丁寧なビルドアップから、中盤3枚と前線の連動性によってチャンスを作ります。一方伊丹ですが、レフリーのジャッジが厳しくピンチを迎えるものの最後の場面で粘り、得点を与えません。
前半23分 失点 (アブリー 0-2 伊丹)
アブリーが押し込む時間帯が続いていましたが、伊丹が効率よくゴールを目指して前半20分に追加点を奪います。
19番がバイタルエリア右から左にドリブルでカットインし、GKとの1対1を冷静に決め差を2点に突き放します。
その後もアブリーがテンポ良くショートパスを繋ぎ、8番のロングパス10番のサイドチェンジによって伊丹を揺さぶります。前半30分ごろ、11番と13番のパスワークにより最後は8番がカットインしてシュートも相手GKの好セーブで阻まれます。
その後も互いにシュートまで持っていく面白い展開が続きますが、得点は生まれず前半終了。
見応えのあった前半戦
- 前半は20分過ぎまで互角の展開でした。特にアブリーのテンポのよいショートパスと時折織り交ぜる個人技、アタッキングサードでの仕掛けに相手は捕まえられない場面がありました。運動量が多く格上相手に互角以上の戦いを見せてくれていました。
- 対する伊丹は、効率的にバイタルエリアを狙い、押し込んだところを中盤とボランチ23番がドリブルで抜け出す場面がよく見られました。アブリーのシステム上、バックラインの前は8番しかいないため、ボランチの両脇を狙われていたように感じます。また、伊丹は中盤の守備意識が高く、守備時には中盤3枚が降りてきて4-4-1-1のような形になって、アブリーの両サイドを抑えていました。
逆転なるか!?後半開始
伊丹2点リードで開始した後半戦。
前半にアブリー11番とマッチアップを繰り広げていた伊丹13番がトップに入り、4-1-3-2の形に。
逆転に向けアブリーが押し込む展開になると想像していましたが、、後半は終始伊丹ペース。伊丹13番と46番が左サイドを起点に上手くボールを収め中盤が後ろから追い越す場面がよく見られ、また運動量も落ちずアブリー陣地で試合を進めます。
一方、アブリーはクリアを収めることが難しくセカンドボールが相手に渡ることがしばしば。また、伊丹が前線の枚数を増やしプレッシングを強めたことで、ビルドアップで引っかかることも増えました。また選手の距離が間延びしていたことから、得意のパスワークは息を沈めます。
後半8分 失点 (アブリー 0-3 伊丹)
苦しい展開が続いていましたが、なんとか前線に繋げるアブリー。しかしまたしてもカウンターで失点。
後半8分、右サイドバックの47番がワンツーで抜け出しシュート。隅に決まり3点差に。
アブリーの選手交代、17番に替えて6番。6番はボランチの位置に入って4-5-1に。後半に、伊丹が前線を厚くしたため、8番との負担がましたことから、負担軽減と距離を詰めてパスの繋ぎをよくする狙いか。
後半13分 失点 (アブリー 0-4 伊丹)
後半13分、47番のコーナーキックが直接入り4点差に。まずは1点を返したいアブリーは徐々に押し上げます。
サイドを起点に時折サイドバックもオーバーラップで絡み1点をを目指しますがゴールが遠い。
しかし、伊丹の運動量は落ちずアブリーのペースは上がらない。前がかりになったアブリーの裏を狙われ、また押し込んではバイタルエリアを上手く使われ、シュート数も大きく伸ばします。一方アブリーは前半に比べてチャンスらしいチャンスが作れず、そのまま試合終了。流れをしっかりとものにした、伊丹が2回戦進出を決めました。
滋賀県を代表して最後まで闘い抜いた選手に拍手を
関西大会という名にふさわしいレベルの高い試合でした。両チームとも技術レベルは高くABRIR FCはパス、伊丹FCらはドリブルで特に見応えがありました。
また、伊丹の選手は身体の使い方(ステップワーク/ボディバランス)がうまかったように感じます。また、各々が試合の場面に応じてポジションチェンジなど個人戦術の高さを感じました。
一方、アブリーは試合に敗れはしたものの、持ち前のパスワークなどにより、前半は多くのチャンスを作っていました。何度かあった流れを掴んでいたら、違う展開になっていたかもしれません。
最後まで諦めずにパスを繋ぎ続けた、走り抜いた姿勢は見ていて気持ちの良いものでした。見応えのあるゲームをありがとうございます。
追伸:サッカーを11人で行う難しさ
ジュニアユースの試合を見る中で改めてサッカーの難しさを感じます。多感な年頃で、特にトーナメントの一発勝負ではアドレナリンが出て熱くなります。自身も中学時代はチームメイトを鼓舞するため、声をたくさん出していました。しかし、見方を鼓舞するつもりの声がけが、受け手によっては背中を押さえつけられる(プレッシャーになる)声がけになってしまうように感じます。
自分とは違う10人と行うスポーツで、チームの勝利に向かって全員の気持ちが上がるような声をかけられるためには、普段からチームメイトの理解と信頼が大事なのでしょうかね。